東京ヤーンクロールのあゆみ 1/3

第1回 毛糸店と人をつなぐ、ということ
2013年、小さな毛糸店「Hitsujidama」を新しい場所へ移転したとき、ふと思いついたことがありました。
当時、オンラインの毛糸店が次々と現れては、気づかないうちに消えていくような時代でした。
海外から毛糸を取り寄せることも、その頃すっかり当たり前になっていました。
そんな状況を見ていて、私は「実店舗を応援するために、何かできないだろうか」と強く思うようになりました。
毎日、大きなリスクを背負いながら実際に店を開けている人たちのことを、もっと協力したい。
自分自身が店をやっていたからこそ、店を経営することがどれだけ大変なのかはよく分かっていました。
だからこそ、東京の毛糸店を営む素晴らしい人たち、その店にしかない知識や技術、そして何より、店を続けていく勇気を、何かの形で讃えたいとも思っていました。
ちょうどその頃、世界のいろいろな場所で生まれている編み物のイベントにも目が向くようになりました。
Knit-in、International Knit in Public Day、Yarn Bombing……さまざまな活動がありましたが、私が特に面白いと思ったのは、大都市の毛糸店が一緒になってイベントを作り、毛糸店とお客様との関係そのものにスポットを当てていることでした。
そこにあったのは、単純な「お店とお客様」という関係ではありません。ものづくりが好きだという気持ちを中心に、お店とお客様がお互いを支え合う。そんな関係でした。
実店舗を構えるというのは、大きな決断です。
家賃を払い、スタッフを雇い、毎月店を維持していかなければならない。その一方で、実店舗だからこそ届けられるものもたくさんあります。
地域のお客様にちょっと変わった素敵なものを紹介したり、専門的な知識を分け合ったり。毛糸やパターン、道具など、編み物をする人の好奇心をくすぐるものが並んだ、クリエイティブな場所を作ることもできます。
店主たちは、自分が愛している繊維工芸を、次の世代にも残したい。その楽しさを、できるだけ多くの人に知ってほしい。そんな思いを持って、自分の人生をかけて店を続けています。
そして、お客様はそんな場所を訪れます。
お金だけではなく、時間や情熱を使って店を支え、友達にもその店のことを伝える。「こんな面白いお店があるよ」と誰かに教えることで、また新しい人がその場所を訪れ、そこで楽しい時間を過ごす。
そうやって、お客様が生み出す喜びや熱意、勢い、そして「この場所があってほしい」という需要が、店を続けていく力になっていくのだと思います。
そして、それぞれの店には、それぞれのお客様が作っていく、その店ならではのコミュニティができます。
(続く)

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